レガート知財事務所は、「知的財産」を通じて、企業の経営を考える特許事務所です。

■ デザイン経営宣言
「デザイン経営宣言」は、「デザインは、まさに産業競争力に直結するもの」であるとの認識に基づいて、産業のしくみの変革を求めるものと理解できます。その中で、デザインは「発明とイノベーションをつなぐ」ものであるとされています。
この趣旨を筆者は次のように理解しています。
競争力のある商品(サービス)を市場に提供するためには、デザイン思考に基づいた「課題(解決)の提案」(デザイン1)があり、それを解決する「発明」(発明1)が生み出され、市場に適応させるデザイン提案(デザイン2)、これに基づいて「発明」(発明2)なされ、「製品(商品)」となって市場に提供される。単に「発明」(発明1)があれば、「デザイン」によって死の谷を渡れるということではない。「デザイン」に対応する「発明」(発明2)が必要だと考えています。
■ デザインと技術開発
「デザイン経営宣言」でいう「デザインで死の谷を渡る」という目標を達成するために、「デザイン」への技術の対応が不可欠です。「デザイン」が発見(発明)した新しい課題を解決するための技術が必要です。
ここで注意したいことは、新しい課題は企業で採否が決定されるということであり、その際には商品としての採算性だけでなく、技術による対応力が大きな判断要素になることです。提案としては魅力があるけれど「技術的に無理だ」という判断が生じることになります。デザインによる提案は時として突飛なものがある。その突飛な提案に技術が対応すれば、デザインが技術の発展の原動力となり、提案を受けた商品が成功すれば社会を変える原動力にもなるはずです。
デザイン経営宣言は、そのことも期待していると思います。
■ デザインとイノベーション
そこで、デザインによる提案を受ける側の「技術開発」の状況を見たところ、「日本の産業部門の技術開発を巡る状況」(令和元年10月16日経済産業省産業技術環境局
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/kenkyu_innovation/pdf/014_05_00.pdf)を発見しました。
その資料では、「破壊的イノベーションに対する企業の意識」として7割の企業が「起こしにくい」と回答し、その理由を67%の企業が「リスクを取ることに消極的な経営」と答えています。そうであれば、デザイン、特にデザイン1を提案しても採用されない、ということになります。
加えて、採用されたとしても、企業では、とうの昔に中央研究所を閉鎖して基礎研究をやめ、上記資料によれば、企業利益に対する研究費への投資が2011年から20%も減少しています。
技術開発がデザインの受け皿です。
デザインががんばっても、いかに評価されても、企業の理解、技術の伴走がなければ「デザイン経営宣言」が目指す産業の活性化は得られないのです。デザインによる突飛な提案を理解する、「デザイン経営」を理解し、加えて研究開発投資を重視する企業が、イノベーションには不可欠であろうと思います。

 

デザインが社会を変えるために
出典:「日本の産業部門の技術開発を巡る状況」令和元年10月16日経済産業省産業技術環境局
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/kenkyu_innovation/pdf/014_05_00.pdf

弁理士法人レガート知財事務所
〒101-0065
東京都千代田区西神田三丁目3番6号
九段オーシャンビル4階
電話:03-6272-6665 FAX:03-6272-9456

page top