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■ デザイン経営
2018年5月23日、「デザイン経営宣言」が発表された。この宣言では、「「「デザイン経営」とは、デザインを企業価値向上のための重要な経営資源として活用する経営である。」と定義した。
■ 「デザイン」という言葉
「デザイン」という言葉は、おおよそ以下の4つの意味で使われている。
@ 個々の製品の色やカタチなど、外見的なもの(狭義のデザイン)
A 製品やサービス全体の設計(広義のデザイン)
B 製品やサービス提供、プロセス全体の設計(発展的なデザイン)
C 会社の組織やマネジメントの設計
経産省「第3回 高度デザイン人材育成研究会」資料2(2019年2月28日)では、高度デザイン人材を「デザインを基軸にして、リーダーシップを持ってビジネスの中核に立てる人材」と定義しており、Cも意識されているように思われる。「宣言」における「デザイン」の射程、「デザイン経営」もCまで意識したものと捉えてよいのであろう。
■ 高度デザイン人材
上掲「資料2」によれば、高度デザイン人材には、次のような能力が要求されている。
「デザインの能力」「デザインの哲学」(デザインアプローチをどのように捉えるかの考え方)、「アート」(個々人の持つ 主観や 想い、視点をもとに問いを 発する 能力、およびその問いを具体的な形にする能力)、「ビジネススキル」(ビジネスのなかでデザインの能力を発揮するための能力)、「リーダーシップ」。
■ 「デザイン」×「経営」
「デザイン経営」の実践とは、「デザイン」と「経営」の融合である。もし上記のようなスキルを身につけた人がいたとしても、経営側の人が聞く耳を持たなければ、彼は動くことができないであろう。「高度デザイン人材」に限らずデザイナーに要求される重要なスキルは、「経営者を納得させる力」ではないかと思う次第。
そして、経産省は「高度デザイン人材」の育成を目指しているが、それだけでなく、経営者への啓蒙に力を入れる必要があろう。これは中機構の仕事なのだろうか。
「デザイン経営」は、デザイナーと経営者の協業であり、「無印良品」スタート時の田中一光(デザイナー)と堤清二(経営者)の協業は典型的な成功例であろう。
■ 突破口は中小企業
「デザイン経営」のフルコース(上掲Cから始まり@まで)の実践は、全社的な取組となる。中小企業であれば、社長の決断次第である。フルコースを提案するデザイナーがいて、社長が「やろう」と言えば決まりである。
そのような活動をしているデザイナーはいるのであるが、やりたいと思いつつも経営者を納得させられないデザイナーはもっと多いであろう。経営者がデザインに理解をもてば、彼らのフルコース提案も受け入れやすくなることは間違えがない。
中小企業の経営者に「デザイン」の重要性を伝えることが、「高度デザイン人材」の育成よりも、早期の効果が期待できるように思うのだがいかがだろうか。


出典:経済産業省(第4次産業革命クリエイティブ研究会による「デザイン」の定義)

 

(DESIGNPROTECT掲載)

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